浮世絵ができるまで(6) - 墨版 - 浮世絵ぎゃらりぃ
浮世絵ぎゃらりぃ

浮世絵ができるまで(6) - 墨版

スポンサーリンク

3.墨版

無事に検閲をパスした絵は彫師に渡され、この絵を元に「墨版(すみはん)」といわれるモノクロの版が作られます。墨版が出来上がるまでの手順は以下のとおり。

下絵を受け取った彫師は、これをまず裏返しにして板に張り付けます。
「浮世絵の下絵」の説明のところで、下絵にはたいへん薄い紙を使っていると書きましたが、その理由がこれです。
版画なのでハンコのように元絵とは左右逆に彫らなければいけないわけですが、トレーシングペーパーのように薄い紙に描いておけば、このように裏返しても墨線は裏からでもちゃんと分かるというわけです。

次に彫師は絵の線だけを残しながら板を紙ごと彫っていきます。
下絵は、なんだかもったいないような気もしますが、この段階で板とともに削られてこの世から消えてなくなってしまいます。
また、この墨版作成の段階で、絵の枠外にL字型の「見当」というものが彫り加えられます。
見当というのは、後で色版を重ね摺りする際に、色ずれしないようにするための目安となるものです。

見当と下絵の線のみを残して版木を彫り終えたら、墨版の完成。次はこの墨版をもとに、色指定用の紙を何枚か摺ります。

浮世絵の魅力と特長のひとつに「多色摺り」が挙げられると思います。しかし製作過程で大事にされたのは、色版よりも墨版の方でした。
墨版はすべての版の基準となるとともに、絵の輪郭を引き締める大事な役割の「線」を表現するものだったからです。
そのため、墨版用の板(堅いサクラの板が用いられます)には、色版のものよりいくぶん上等なものが使われました。
また、色版の板は節約のため裏表両面使いまわしされることも珍しくありませんでしたが、墨版はそんな使い方はせず、片面だけしか使わないのが一般的でした。
扱う職人も、大事な墨版をまかされるのは中堅以上の熟練者で、経験の浅い職人たちは色版のように比較的簡単なものを担当するのが常でした。

スポンサーリンク