彫りと摺りの技術(9) - まとめ - 浮世絵ぎゃらりぃ
浮世絵ぎゃらりぃ

彫りと摺りの技術(9) - まとめ

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まとめ

さて、彫と摺りの技術、いかがだったでしょうか。
初めて本物の浮世絵を目にした人が一様に驚くのが、最初に見ていただいた髪の毛の細かい描写です。
あの細くて流れるようななめらかな曲線。おそらく手書きで描けと言われただけでも、たいていの人は降参してすぐに投げ出してしまうのではないでしょうか。
それを彫師は、彫刻刀であのように細かく版木に彫ってしまうのです。それも、納期に間に合うよう短時間で、です。
浮世絵の納期がだいたいどれくらいだったかといいますと、通常、絵師が浮世絵の下絵を描き上げてから、それが錦絵となって店頭に並ぶまで、だいたい一週間というのが相場だったそうです。
彫師、摺師は、以上見てきたような仕事を、わずか一週間以内で仕上げたわけで、まさに神業と言うしかありません。

浮世絵は、絵師が絵を描いて終わりではなく、むしろそこからが職人の腕の見せ所なのです。
あのすごい髪の描写にしても、最初から絵師の下絵に1本1本細かく描かれているわけではなく、彫り師の腕によって表現されるものなのです。
同様に着物の柄も(これは最初から絵師が指定する場合もありましたが)、彫り師に一任されることが少なくなかったようです。
上でご紹介した「ぼかし」や「から摺り」、「布目摺り」なども、本来下絵には描かれていない、摺りの段階で初めて姿を見せる効果です。
下絵にはない柄を彫り師が加え、さらに摺り師がそれを彩る。
この絶妙なチームワークで、絵師の下絵をみごとなまでに美しく装飾してゆくのです。

そういう意味からすると浮世絵は、紙に描かれた単なる絵ではなくて、職人たちの技術によって平面の絵にさらにリアルな立体表現と彩色の工夫が加えられた3次元芸術で、絵というよりむしろ「美術工芸品」に近いのではないかと私は思います。

浮世絵が世界中で芸術作品と評されている理由には、もちろん絵そのもののユニークさもあるのですが、こうした工芸品としての細密さ、美しさも実は理由のひとつとして挙げられるのです。

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